人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)

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第32回AI美芸研
「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・3」

    • 書籍『S/N』刊行記念

      第32回AI美芸研
      S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・3
      - 2021年3月27日(土)14:00-18:00
      - ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)

      発売が開始された当会発行書籍『S/N』は、21世紀前半の創作と鑑賞の密かな歪みから読み取れる、芸術と美学のある種の本質に迫るものである。扱う題材は、2014年に世間を騒がせた、佐村河内守(S氏)と新垣隆(N氏)による「ゴーストライター事件」である。前提される時代的要因は、2012年以降第3次ブームと呼ばれて躍進を見せた、「人工知能」(AI)という技術あるいは他者である。S氏がもし人間の作曲家にではなく、AIの作曲家に代作させていたとしたら、何がどのように問題だろうか。各界の識者33名の応答を所収した。日英バイリンガル/廃盤中古CD「佐村河内守《HIROSHIMA》」付録/124x140mm/448頁/並製・豪華箱入/ISBN978-4-9902903-8-2/特典付

      京都市京セラ美術館で現在開催中の「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」展に、当会はS氏からN氏への通称「指示書」(複製)他を展示している。来たる3月27日(土)、同じ京都市左京区にあるゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川にて、久々の対面形式となる「AI美芸研」を開催する。「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」と題するが、今回は2019年の2回に引き続く3回目だ。因みに翌週の4月3日(土)には同ヴィラにて4回目、4月7日(水)には東京DOMMUNEにて5回目を行う予定である。

      その3月27日は、岡田暁生、建畠晢から講演を頂く。また、「平成美術」展企画監修の椹木野衣からも、冒頭挨拶を頂く予定である。マスクを着用し、京都市コロナあんしん追跡サービスに事前登録の上、奮って御参加下さい。

開催概要

  • 【名称】

    • 第32回AI美芸研「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・3」
  • 【日時】

    • 2021年3月27日(土)14:00-18:00(開場13:30)
  • 【会場】

  • 【冒頭挨拶】(予定)

    • 椹木野衣(美術評論家、多摩美術大学教授)
  • 【講演】

    • 岡田暁生(音楽学者、京都大学人文科学研究所教授)
      建畠晢(美術評論家、詩人、多摩美術大学学長)
      中ザワヒデキ・草刈ミカ(美術家、AI美芸研)
      ※講演後、全体討論の時間を設けます。
      ※全体討論には椹木野衣も登壇します(予定)。
      ※講演と討論は撮影、実況、配信有です。記録動画を後日公開します。
      ※言語:日本語
  • 【参加費】

    • 2,500円(原則どなたでも参加可、予約推奨、マスク着用をお願いします。)
      ※受付は先着順、検温有、コロナ対策の為60名までとさせて頂きます。
      ※書籍『S/N』付録「AI美芸研参加優待券」持参にて500円お引きします。
      ※受付円滑化の為 info@aibigeiken.com 宛に事前予約を推奨します。
      ※京都市コロナあんしん追跡サービスへの事前登録をお願いします。
      https://qrbox.cloud/c31/nJRsZ#/
  • 【主催】

    • 人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)
  • 【特別協力】

    • ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都
  • 【備考1】

    • 当会発行書籍『S/N』(副題:S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら)刊行記念を兼ねています。同書は研究会会場でも購入できます(5,500円)。
      https://www.aibigeiken.com/store/sn_j.html
  • 【備考2】

    • 京都市京セラ美術館で開催中の展覧会「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」(椹木野衣企画監修)に「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」を出品中です。未見の方は御高覧の上、研究会にお越しください。
      https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20210123-0411

講演内容

  • 「自動化される音楽と感動商法の成れの果て」
    岡田暁生(音楽学者、京都大学人文科学研究所教授)

    • 佐村河内事件は近代音楽の成れの果てである。一方に音楽作品を苦悩の物語として消費する世間の感動中毒がある。他方で音楽営為の果てしない分業合理化がある。佐村河内事件はパロディー以上でも以下でもない。そしてこの感動商法の効率化をさらに進めようとすれば、AIによる代理作曲に行きつくのは必然だろう。ポピュラー音楽で常套化している「胸キュンコード」の使い回しなどは、十二分にAIで作曲可能だ。AIとアナログ作曲の間に質的断絶は存在していない。ただし同時に、音楽が「感動」を発生させるためには、たとえ自らは何もしておらずとも、ただ『居る』だけで関係性の化学反応を生じさせるカリスマの存在が不可欠であることも忘れてはいけないだろう。その意味で佐村河内をただの詐欺師と嗤うことは出来ない。
    • ※音楽学者の岡田暁生は著書『音楽と出会う』で「人間の知能がAI並みになることの方を心配すべし」と説く。2009年、吉田秀和賞。2013年、放送大学で「西洋音楽史」。京都大学人文科学研究所教授。(※文責・AI美芸研)
      https://kyouindb.iimc.kyoto-u.ac.jp/j/cP7xZ
  • 「構想と表現 S氏の指示書を巡って」
    建畠晢(美術評論家、詩人、多摩美術大学学長)

    • ソル・ルウィットはかつてパラグラフ・オン・コンセプチュアルアートと題したテキストで、自らの作品の制作のシステムはすべて事前に定められ、機械的に運用される。そのプロセスでさまざまなサイドエフェクトが派生するが、それで当該のシステムが変更されることはないと述べている。そのことを逆にいえば、制作のシステムとは予期せぬサイドエフェクトを発生させるための仕組みということになるのかもしれない。同じような逆説は音楽や芝居の世界にもあるはずで、穿った見方をすれば公演において優れたサイドエフェクトを誘発し続けてきた楽譜や台本こそが古典と称される資格があるともいえそうである。S氏の指示書をきっかけに構想と表現の問題について、改めて考えてみたい。
    • ※美術評論家兼詩人の建畠晢は、書籍『S/N』に「異例の指示書」を寄稿、S氏の指示書はさまざまな視点からの議論に値するとしている。多摩美術大学学長。埼玉県立近代美術館館長。当会共同発起人。(※文責・AI美芸研)
      https://www2.tamabi.ac.jp/geigaku/professor/akira_tatehata/
  • 「なにゆえ“S/N”で“AI”か」
    中ザワヒデキ・草刈ミカ(美術家、AI美芸研)

    • ゴーストライター事件においては、一個人に帰せられるはずの「作曲=創作」が、「音符は書かないが指示書を書くS氏の創作」と「指示書から音符を書くN氏の創作」の二つに分断(S/N)されていた。世間常識的には、創作は音符を書いたN氏に帰せられる。ところがAIによる自動作曲技術は、役割分担的にはN氏の創作性を代替するものであって、S氏のそれではない。ここから「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」という問いが生じたのだった。
      書籍『S/N』は6章から成り、それぞれ「平成の墓石」「音楽(一般)」「音楽(AI)」「美術・美学」「社会」「令和の初音」と名付けられている。各章冒頭に黒地に白抜きで印字された檄文が、中ザワと草刈の「S/N」と「AI」に対する態度表明に相当する。講演にて概観したい。
    • ※『S/N』に中ザワは「AIと中動態的創作(人間は考えない葦になる)」を、草刈は「芸術というポスト・トゥルース(AIによる鑑賞と評価)」を寄稿。共著の「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら?」も加筆再録した。
      https://www.aloalo.co.jp/nakazawa/
      http://www.mika-kusakari.com/