人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)

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第33回AI美芸研
「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・4」

    • 書籍『S/N』刊行記念

      第33回AI美芸研
      S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・4
      - 2021年4月3日(土)14:00-18:50
      - ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)

      会期終了間近となった「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」(京都市京セラ美術館・椹木野衣企画監修)に、当会はS氏(佐村河内守)からN氏(新垣隆)への「指示書」(複製)他を展示している。平成26年の「ゴーストライター事件」では、一個人に帰せられるはずの「作曲=創作」が、「音符は書かないが指示書を書くS氏の創作」と、「指示書から音符を書くN氏の創作」の二つに分断(S/N)されていたことから、「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」という問いが生じたのであった。

      その問いに対する各界の識者33名の応答を、令和3年3月に発売開始した当会発行書籍『S/N』に所収した。日英バイリンガル/廃盤中古CD「佐村河内守交響曲第1番《HIROSHIMA》」付録/124x140mm/448頁/並製・豪華箱入/税込5,500円/ISBN978-4-9902903-8-2/※特典:「AI美芸研」参加優待券2枚

      上述の展覧会参加と書籍刊行を記念して、先週末の第32回AI美芸研に引き続き、第33回AI美芸研「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・4」を4月3日(土)、ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川(京都)にて開催する。出演は中川俊郎、三枝成彰、吉松隆、長木誠司(リモート)、中ザワヒデキ・草刈ミカ。全体討論にはエンツィオ・ヴェッツェルも参加する。書籍同様、現代音楽に対する立場が一様ではない顔ぶれで、言葉によらない発表も含まれる見通しだ。京都市新型コロナあんしん追跡サービスに事前登録し、「平成美術」未見の方はお駆け込み頂いた上で、奮って御参加下さい。

開催概要

  • 【名称】

    • 第33回AI美芸研「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら・4」
  • 【日時】

    • 2021年4月3日(土)14:00-18:50(開場13:30)
  • 【会場】

  • 【講演】

    • 中川俊郎(作曲家、ピアニスト)
      三枝成彰(作曲家)
      吉松隆(作曲家)
      長木誠司(音楽学者、東京大学教授)
      中ザワヒデキ・草刈ミカ(美術家、AI美芸研)
      ※長木誠司はリモートにて出演します。
      ※講演後、全体討論の時間を設けます。
      ※全体討論にはエンツィオ・ヴェッツェル(ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都館長)も参加します。
      ※講演と討論は撮影、実況、配信有です。記録動画を後日公開します。
      ※言語:日本語(ヴェッツェル氏は通訳有)
  • 【参加費】

    • 2,500円(原則どなたでも参加可、予約推奨、マスク着用をお願いします。)
      ※受付は先着順、検温有、コロナ対策の為60名までとさせて頂きます。
      ※書籍『S/N』付録「AI美芸研参加優待券」持参にて500円お引きします。
      ※受付円滑化の為 info@aibigeiken.com 宛に事前予約を推奨します。
      ※京都市コロナあんしん追跡サービスへの事前登録をお願いします。
      https://qrbox.cloud/c31/nJRsZ#/
  • 【主催】

    • 人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)
  • 【特別協力】

    • ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都
  • 【備考1】

    • 当会発行書籍『S/N』(副題:S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら)刊行記念を兼ねています。同書は研究会会場でも購入できます(5,500円)。
      https://www.aibigeiken.com/store/sn_j.html
  • 【備考2】

    • 京都市京セラ美術館で開催中の展覧会「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」(椹木野衣企画監修)に「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」を出品中です。未見の方は御高覧の上、研究会にお越しください。
      https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20210123-0411

講演内容

  • 「空想する芸術」
    『8つの音響詩』成立過程の概要説明、及び実演(抜粋)
    中川俊郎(作曲家、ピアニスト)

    • シンポジウムに来て新垣さんについて語ってくれと何度か誘われたことがあるが、そのつど丁重にお断りしてきた。彼は私の唯一の作曲の生徒で、私が何を喋っても間違いなく客観性を欠くことになるだろうというのがその理由だった。また多くの場合、端から新垣さんに対する先方の否定的な見解が、透かし見えたからでもあった。しかし何かの機会に「説明でも釈明でもなくて」自分の立場を公に、表明しておきたいと思ってはいた。その結果の一つが Youtube上に挙げられている彼と共演した自作連弾曲「65のマイクロプレリュード」であり、もう一つがこの音響詩である。何かに対する祈りの感情は最も大切で、それによって人と人とがつながることが出来る。
    • ※作曲家、ピアニストの中川俊郎は書籍『S/N』に「“8つの音響詩”…音読(歌唱)または黙読のための」を寄稿。印刷時に現場は「文字化けか」と慌てた。本書第2章冒頭文末の一行は、本日成就する。(※文責・AI美芸研)
      https://twitter.com/t_nakagawa_jscm
  • 「作曲AIは、感動を生み出せるのか?」
    三枝成彰(作曲家)

    • 数年前、かの「S氏」が別の作曲家「N氏」に「交響曲第一番」の代作を依頼していたことが明るみに出て、世間を騒がせた。
      もし「N氏」が人間でなくAI=人工知能だったら、いい作品を書けたのか?
      いまテクノロジーが音楽の世界に深く入り込んでいることは事実だ。商業音楽の分野ではほぼすべてが先進機材によって作られた音になっている。
      将来、人々を感動させる音楽を、AIは生み出せるのか? テクノロジーが進化していくのは当たり前で、その善悪を決めることはできない。
      いつの日か究極の作曲AIが生み出した未来の「交響曲第一番」を聴いてみたいとは思う。だが、私はそのとき感動できるだろうか?
    • ※作曲家の三枝成彰はかつては前衛の旗手だったが批判者に転じた。芥川作曲賞選考ではS氏を推したが賞候補には残らなかった。書籍『S/N』への寄稿は本講演と同題である。昨年文化功労者に選ばれた。(※文責・AI美芸研)
      https://saegusa-s.co.jp/
  • 「AIの中のゴーストが綴る交響曲」
    吉松隆(作曲家)

    • 万能のAIが生まれ、「何か作曲してごらん?」と言ったら、彼はこう質問してくるだろう。どれくらいの「長さ(時間)」で、どんな「編成」で、どんな「スタイル(様式)」の音楽を想定していますか?。出力は「楽譜」にしますか、あるいは「MIDIデータ」ですか「音声ファイル」ですか?。さらに「楽曲の構成」は?「形式」は?そして素材となる「メロディ」は?「ハーモニー」のシステムは?「リズム」の種類は?使用する「言語」は?
      もしそういった注文が何もなく、AIが全て自主的に(芸術的感興にかられて)音楽を書くとしたら、そもそも「人間」向けの音楽である必要はないのだから、おそらくそれは可聴音域を超えた(データ通信のような)音の連続だろう。いや、そもそも「音」である必要もなく、「聴き手」のために出力する必要もないのだから、もしかしたら永遠に続く「無音」かも知れない。
    • ※交響曲作曲家で「現代音楽撲滅運動」を主唱する吉松隆のブログ「隠響堂日記」から、S氏に関する記載を書籍『S/N』に再録した。最初の手記は事件6年前に遡る。事件直後の書込は7年後の今にも響く。(※文責・AI美芸研)
      http://yoshim.music.coocan.jp/
  • 「優秀なAIならS氏になれたかも?」
    長木誠司(音楽学者、東京大学教授)

    • S氏は残念ながらフェイクであった。しかしながら、もし優秀な人知を備えたAIがあったとしたら――。芸術的価値観も歴史的展望も音楽的コンテクストも聴き手の要望も時代の要求も・・・すべてを高度にインプットされ、ディープ・ラーニングを経た秀逸なAIが存在すれば、それはもしかすると実際に N氏が創作した作品に近いものを創ったかもしれない・・・。そんな「妄想」をマーラーetc.受容のなかで考えてみるのも悪くない。曲がり角を通り越してだいぶ進んだ現代音楽史のなかで、それは真摯な問いにも悪い冗談にもなり得るだろう。
    • ※音楽学者、東大教授の長木誠司は、正しくは東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程修了。書籍『S/N』本体記載の経歴を修正します。なお同書付録の廃盤中古CD(S氏《HIROSHIMA》)ではライナー担当。(※文責・AI美芸研)
      https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/research/faculty/list/ics/f002261.html
  • 「AIと中動態的創作/芸術というポスト・トゥルース」
    中ザワヒデキ・草刈ミカ(美術家、AI美芸研)

    • 「S/N」に関連して話題を二点提供したい。ひとつは中ザワが書籍『S/N』に寄稿した「AIと中動態的創作(人間は考えない葦になる)」に関するもので、例えば代作を「依頼する」という能動態と「依頼される」という受動態の間に「依頼を受ける」という中間的な状態(中動態)があるとするならば、それが「主体的な作曲」からの解放ひいては「自動的(AI的)な作曲」を惹起するのではないかというもの。もうひとつは草刈が寄稿した「芸術というポスト・トゥルース(AIによる鑑賞と評価)」に関するもので、そもそも芸術には絶対的な尺度がないという美学上の問題を「芸術のポスト・トゥルース性」として指摘した上で、価値関数を(人間がでなくAIが)自ら書くAIが実現すれば人間美学より優位に立てるだろうかというもの。
    • ※美術家の中ザワヒデキと草刈ミカは2016年に総勢29名でAI美芸研を発足。京都市京セラ美術館で開催中の展覧会「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」(椹木野衣企画監修)にS氏による指示書(複製)ほかを出品。
      https://www.aloalo.co.jp/nakazawa/
      http://www.mika-kusakari.com/