人工知能美学芸術研究会(AI美芸研)

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S/N
S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら
What If AI Composed for Mr. S?

  • 【リード】
    • S氏、N氏は実在する。S氏はN氏に「指示書」に基づく代作を依頼し、N氏はゴーストライターとして作曲を完遂していた。一方でS氏は自らが全聾であり、自身の内から一音符一音符を紡いだと称していた。生み出された「交響曲第1番」は、ごく少人数からの嫌悪と、圧倒的多人数からの賞賛と感動と涙に包まれていたが、ある時、N氏は自らがゴーストライターであったことを名乗り出て、問題となった。
      さて、AI美芸研としてはこれを民事事件として扱わない。
      「S氏がもし人間の作曲家にではなく、AIの作曲家に代作させていたとしたら、何がどのように問題か、または問題はないのか」と問いかける。N氏の才能はAIでは代替できないとの議論も可能だろうが、その一方で、S氏の「指示書」自体の創作性や、AIという他者または技術を想定することにより顕在化する、作品と人称性の問題にも斬り込めるはずだ。
      ※「平成美術:うたかたと瓦礫 1989-2019」(椹木野衣企画監修、京都市京セラ美術館、2021年1月23日-4月11日)参加作品関連企画。
  • 【概要】
    • 本書は21世紀前半の創作と鑑賞の密かな歪みから読み取れる、芸術と美学のある種の本質に迫ろうとするものである。扱う題材は、2014年に世間を騒がせた、佐村河内守(S氏)と新垣隆(N氏)による「ゴーストライター事件」である。前提される時代的要因は、2012年以降、第3次ブームと呼ばれて躍進を見せた、「人工知能」(AI)という技術あるいは他者である。
      ゴーストライター事件においては、芸術家という一個人に帰せられるはずの近代的な「作曲=創作」が、「音符は書かないが指示書を書くS氏の創作」と、「指示書から音符を書くN氏の創作」の二つに分断(S/N)されていた。代作という語が示すように、世間常識的にはこの場合の実際の創作は、音符を書いたN氏に帰せられるものであろう。ところが近年のAIによる自動作曲技術は、役割分担的にはN氏の創作性を代替するものであって、S氏のそれではない。ここから、「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」という問いが生ずる。
      本書には、この問いに対する各界の識者33名の応答が所収されている。
  • 【基本情報】
    • 書名|S/N:S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら
      編・著・発行|人工知能美学芸術研究会
      特別協力|ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都
      発行日|2021年1月23日(発売日|2021年3月11日)
      日英バイリンガル/廃盤中古CD付録/124x140mm/448頁/並製・豪華箱入
      ISBN|978-4-9902903-8-2
      古物商許可証|東京都公安委員会 第303332007000号
      ※特典:「AI美芸研」参加優待券2枚(1回につき1枚のみ500円分として使用可能)
      ※付録のCD「佐村河内守:交響曲第1番《HIROSHIMA》」は中古品です。再生確認済みですが、中古品であることを予めご了承ください。
  • 【執筆】
    • 「平成の墓石」「音楽(一般)」「音楽(AI)」「美術・美学」「社会」「令和の初音」
      吉松隆、片山杜秀、渋谷慶一郎、長木誠司、三枝成彰、沼野雄司、五十嵐玄、鈴木淳史、平石博一、中川俊郎、古川聖、大村英史、土屋雄、川島素晴、足立智美、徳井直生、建畠晢、中井康之、成相肇、佐藤守弘、原田裕規、塚田優、天野一夫、筒井宏樹、藤井雅実、中ザワヒデキ、草刈ミカ、森達也、斎藤環、赤坂亮太、水野祐、椹木野衣、エンツィオ・ヴェッツェル。
  • 【ポスター】
  • 【目次】
    • コンセプト……002-005
      展示写真(The Container Gallery)……006-013
      指示書……014-015
      序……016-019

    • ■第1章 平成の墓石
      吉松隆|隠響堂日記……032-064
      コラム 1……065
      片山杜秀|佐村河内守と麻原彰晃……066-077
      渋谷慶一郎|モダニズムの矜持と「S/N」問題……078-099

    • ■第2章 音楽(一般)
      長木誠司|2011年初夏のあるレコード会社とのやりとり(抄)〜「許容範囲ではありましょう」……106-113
      三枝成彰|作曲AIは、感動を生み出せるのか?……114-121
      沼野雄司|N氏がもしも楽譜作成ソフトを使っていたとしたら:作曲するとはどういうことか……122-129
      五十嵐玄|黒衣の使者と、最後のファウスト……130-137
      鈴木淳史|麗しきロマン派の呪縛よ……138-145
      平石博一|S氏からN氏への指示書の周辺……146-153
      中川俊郎|「8つの音響詩」...音読(歌唱)または黙読のための……154-161

    • ■第3章 音楽(AI)
      古川 聖|もしAI作曲家が和声学のレッスンを受けたら……168-177
      大村英史|シンギュラリティ:N氏がもしAIから代作させられていたとしたら……178-185
      土屋 雄|こころの素描……186-193
      川島素晴|AI作曲家は成立するか……194-201
      足立智美|AIと捏造……202-207
      徳井直生|S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら:作曲と音楽作品の未来像……208-214
      コラム 2……215

    • ■第4章 美術・美学
      建畠 晢|異例の指示書……222-234
      コラム 3……235
      中井康之|人工知能と芸術家の関係性について……236-243
      成相 肇|絵画のチューリング・テスト、AIによる価値解体……244-249
      佐藤守弘|暗い部屋のなかの人工知能……250-257
      原田裕規|佐村河内という人間、ラッセンというAI……258-265
      塚田 優|文化人としての佐村河内守と横尾忠則……266-273
      天野一夫|S/NとAIのあいだで……274-281
      筒井宏樹|ヒロ・ヤマガタ問題、方法主義、AI美芸研……282-289
      藤井雅実|AIは欲望と情動の地で歌えるか?……290-299
      中ザワヒデキ|AIと中動態的創作(人間は考えない葦になる)……300-308
      コラム 4……309
      草刈ミカ|芸術というポスト・トゥルース(AIによる鑑賞と評価)……310-322
      コラム 5……323

    • ■第5章 社会
      森 達也|表現/嘘/真実……330-337
      斎藤 環|ポストモダンの交響曲へ……338-345
      赤坂亮太|S氏がAI作曲家に代作させていた場合の法的検討……346-353
      水野 祐|AI創作・生成物が変容させる創造性について……354-360
      コラム 6……361

    • ■第6章 令和の初音
      椹木野衣|歴史の遠近をすり抜けて:「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」展からの考察…368-381
      中ザワヒデキ・草刈ミカ|S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら?……382-413
      エンツィオ・ヴェッツェル|人間S氏擁護論……414-419

    • S/N: 年表……420-423
      人工知能美学芸術研究会 年譜……424-433
      人工知能美学芸術研究会 メディア掲載……434-437
      展示写真(京都市京セラ美術館)……438-445